23ヴァンキッシュC3000SDHと22イグジストLT2500Sのチューニングのご依頼です。

23ヴァンキッシュは極みチューンを実施。
22ステラ世代の極みチューンは原則受付停止しておりました。18ステラ世代とは構造が大きく異なり、作業内容を模索していましたが、何とか作業内容に見通しが立ちました。
ただ、現状も前向きに受付したくない理由として、18ステラ世代よりも施工における不良率(メーカーさん側での個体不良ではなく、施工時の効果があまり出ない個体という意味)が高いと思われるため、施工してもあまり効果がない可能性があることです。
その点をご了承の上であれば作業は可能です。
ラインローラー2BB化
こちらは極みチューンとは別です。
ラインローラー2BB化、純正ゴールドのラインローラーへ変更です。

こちらには高耐食ベアリングをグリスのまま仕上げていきます。

ローターの自重バランスをチェックしましたが、問題なしですね。

ラインローラー自体はメーカーにも在庫ありのようですが、ベアリングを受けるカラーが弊社在庫限りとなります。ご希望の方はお問い合わせください。
社外製のラインローラーだと施工可能となります。
ボディ内部チェック
ドライブギア。

ボディ内部。

中間ギア。

裏面チェック。

グリスバランスは適切ですね。特に問題なさそうな状態です。
なお、ドライブギアの形状が初期個体から変更になっています。22ステラ、23ストラディックと同一形状になっていると思われます。

23ヴァンキッシュ、24TPのみ形状が違っていたと思いましたが、統一されたんでしょうか。
ボディ全分解完了です。

Oリング交換
左右とも内径6mm・外径7mm径ですが、ドライブギアのボディ側はベアリング内径7mmであり、圧入が強くなるためサイズダウンしたほうがスラスト方向の駆動に余裕が出てフィーリングが良くなります。

リールフット側のベアリングは内径8mmですので、そのままでも良いですが、それぞれダウンすることでOリングの固定レベルを止まりすぎる状態を防ぎます。
考え方としては、ギアが密着する状態でもフィーリングが良い個体は気にならないのですが、密着させるとどうしてもゴリ感、コロ感、シャリ感がある個体がございます。内径6.0mmをそれぞれ5.0mm、5.5mmへ変更するだけです。
ウォームシャフトBB化・平シム化
ウォームシャフト下のブッシュをベアリングへ変更です。

こちらを平シムへ変更し、テンションを開放します。がたつきが出づらいポイントを探ります。今回は0.38mmで仕上げております。
中間ギア軸バネを除去とシム調整
中間ギアには軸にバネを入れており、上から中間ギアを押さえつける構造になっています。

このギアはピニオンの回転時に下に力が加わるので押さえつける力は出るのですが、バネを抜くことでノイズを減らす効果と極小シムを入れることで、ボディとの接地面積を下げることができ、極力ノイズを低減することができます。
ただし、クリアランス調整を失敗すると、止めたときにカチカチとノイズが出る原因になるため、かなりの精度が必要です。今回は軸の長さを少し調整し、2.0mmのシムを入れました。
ピニオンギア研磨
ピニオンギア内部を研磨します。通常は行いませんが、メインシャフトとの引っ掛かり感がある場合に行います。

今回の個体は、メインシャフトの収まりが問題になりそうです。
ボディ仕上げ
IOSケミカルでの仕上げとなります。

ピニオンギア上部ベアリングにIOS01を添付。

ローラークラッチにもIOS01。

ラインローラーは軸部と周辺にIOS02を添付。
一度組みましたが、ノイズは低減しましたが、ギア感が抜けません。元々のグリス量が良くケミカルバランスが良かったので、そこまで改善しないです。
ギア鳴りがあるので、シム調整を行います。

ピニオンギア上部ベアリング下にシムを入れて調整します。
ローターナットベアリングも確認します。

ローターナットベアリングは純正のままでもそれほど変化がないので、そのままとしました。

オイルベアリング仕上げ
再度やり直します。

元々軽巻き希望なので、オイル仕上げで再度調整を行います。

完全脱脂して、IOS01と02をそれぞれ添付しました。

ノイズの原因を探ります。

仮組してテスト。
ピニオンギア下のベアリングノイズがあることを確認しました。

新品の個体でもピニオンギア下のベアリングは交換することはよくあります。

メインシャフトなしで組みテスト。

ケミカルはIOSギアグリスを使用です。

ベアリングノイズは低減しましたが、ギア鳴りがわずかに残っています。ギア感がまだ抜けないですね。ドライブギアのクリアランスチェックを行います。
ドライブギア、ピニオンギアのクリアランスチェック
Oリングを外してチェック。

シムですが、0.13mmの所、0.12mmで組み直しました。

Oリングを再装着します。

最後にピニオンギア下部のクリアランスチェックです。

ウェーブワッシャーを抜いてクリアランス調整をすると、巻きが安定せずざらつきが出ます。18ステラ世代ではこの調整が有効でしたが、22ステラベースだとウェーブワッシャーを温存する必要があります。
0.10mmのシムを0.05mmのステンレスシムへ変更。
テンションを抜いて軽く仕上げます。
ハンドル、スプール仕上げ
ハンドルノブ、スプールを仕上げます。

インナーを抜いて、それぞれ0.23mm・0.25mmでセッティング。

IOS02を軸に添付しております。
ドラグワッシャーはデカくまを使用。

仕上がりは?
かなり時間を使い作業をしました。

巻き感が少しずつ改善したことで多少良くなったかな位の改善です・・・。

不具合のある個体ではないですし、使用感が悪い訳ではないのですが、個体を選んでしまうという理由がこれですね。今回の個体はピニオンギア下のベアリング交換をした原因を考えると、メインシャフトの縦軸のバランスが少し崩れている可能性があります。
パーツを目視してもわかりませんが、
ローターナット内部へベアリングを入れずにローターナットでローターを固定しハンドルを回すと良いフィーリングなんですけど、その状態でローターナットベアリングを入れた状態(スプールが乗っていない状態)だと少しノイズを感じ、さらにスプールを乗せる(リールが完成した状態)とギア鳴りとギア感が出ます。
メインシャフトと摺動部分の問題であると思います。いろいろと検討しましたが、クリアランス調整やケミカルバランスではどうにもならない違和感なんですよね。
一度軽巻き使用になったヴァンキッシュを使っていただいて判断いただけると幸いです。
特殊表面処理加工テスト施工(2025/6/23追記)
金属への特殊表面処理加工をモニターにて施工させていただきました。
再洗浄、完全脱脂。

施工実施。

処理加工実施。ローターナットベアリングが抜けていますが、後ほど作業しております。
グリスアップ。

ベアリング等は非常に効果がわかりやすく、すべすべとした滑らかさが生まれました。
全体として軽さが底上げできたと思います。ベアリングに関してはオイル仕上げとはなりますが、処理後はノイズも出づらくなります。
ありがとうございました。

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